ブログ

制作の記録と日記

#00082 時間が経つということ

ニコラス・ニクソンの写真集"Brown Sisters"を見たときの感動は今でも覚えている。時間が経つ、その逃れることができない事実をこれだけ鮮やかに表現できるのかと。『通常の』写真表現ではその時間の経過を別の形で表すことが多い。いわゆる痕跡というもので、人間だとシワや皮膚感など、そのディテールから人生を想像したり、時間の経過を感じたりする。

 

写真表現の強さは時間にあると最近強く思う。ディテールで表現するのではなく、ニクソンのような時間を重ねていくことで表す方法だ。あらゆる表現にとって重要なメタファー。それに頼らない事実の積み重ねによる写真表現を確立させたい。その強さが目に見えるようになるまで10年20年という長期間で取り組む必要があるし、その間にも写真やカメラ自体が大きく変化する可能性もあるわけで、どうなるのか分からない部分を楽しみながら続けていきたい。

 

 

#00081 インプットとアウトプット

作品の追い込み。ここからは馬力だけではどうも上手くいかない重要な作業。

制作に夢中でこの1ヶ月は写真展や美術館に行く時間がほとんどなかった。7月までは展示や本屋巡りでインプットする時間が取れていたが、この状況はしばらく続きそうだ。とにかく完成まで気を抜かないで進めていきたい。

 

3年前に大学に交換留学生として来ていた友人と再会。アーティストとしてもう一度日本で勉強しなおすようだ。その姿勢を見習いたいと思うし、自分も近い将来...と夢見てしまう。

 

 

#00080 写真と言葉

新聞のページはテレビ、社会、地域、スポーツ、くらし、教育、文化、解説、投書、商況、経済、国際、政治、総合などで構成され、そこに広告スペースが散らばっている。広告は文庫本や健康飲料、精力剤まであり読者の年齢層に合わせたものだ。この2週間は支持体に使う新聞紙の選別。二百部以上ある新聞の写真と言葉を注意深く見ていく。写真そのものを見続ける体力はあるはずだが、この地味な作業に体力を奪われている。残り五十部を残して今日は終了。作業スペースは新聞だらけ。一部120円の新聞を定期購入するのは勿体無い気もしていたが、印画紙と考えれば驚くほど安い。

 

写真が上手いって何のことだろう。良い写真ってどんなものだろう。現代写真では明確な基準に沿った『良い写真』はもはや評価の対象にはなりにくい。いやそれを競うコンペティションは未だにあるが、先端的な表現になればなるほど基準に合わせたトレーニングとはちがう積み重ねが必要になってくる。

 

東京造形大学付属美術館で開催している高梨豊先生と大辻清司先生の写真展を見た。高梨先生の作家としてのスタンスが解説付きで展示してあり、一緒に見た学生たちも高梨豊という写真家に興味を持ってくれたと思う。その後は高梨先生の写真集を図書館で借りてディスカッション。極めてオーソドックスな撮影スタイルについて、コンセプトとタイトルについて、ブレのない編集とコンテについて話し合った。10月3日のトークショーも楽しみだ。