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制作の記録と日記

#00057 空白の時間

半年間試作を続けてきた新しいアプローチが来月に完成する。

自分の作品は長期にわたるモチーフの観察と記録によって作品が少しづつ形成されていく類のシリーズが多いが、今回のアプローチは写真の記録性とコンテンポラリーアートの組み合わせをビジュアル化したもので他の作品と比べるとかなり概念的に作品を作っている。

 

現在の写真表現のお手本にしている人がいる。スペインにあるエルブジという世界的に有名なレストランの料理長、フェラン・アドリアだ。コック時代にそのレストランを知って、革新的な調理技術の開発や世界中の調理方法を柔軟に自分の料理に取り入れるアドリアに憧れた。エルブジは一年で半年しかお店を開かず、残りの期間は新しいレシピを開発するために化学者や他分野の専門家を招き化学反応を学んだりその化学反応と素材の組み合わせの試作を繰り返す。半年間待っていたお客さんを喜ばせるのは並大抵の事ではないが、その実験精神を継続する力によって世界一予約の取れないレストランとして君臨していた。現在は料理研究所になっているらしく、一年中研究できる環境が羨ましい。

彼の料理分野は分子ガストロノミーというもので、従来の料理のあり方を守りながら調理技術を上げるものではなく、化学的な理論や反応をもとにレシピを組み立てていく、あるいは料理のコツと呼ばれてきた様々な調理技術や味付けを化学的に検証してブラッシュアップしていく。その分野の料理人は化学者にカテゴライズされるんじゃないか、というくらい概念的な発想を持っていて構造的に料理を組み立てていく傾向が強い。現代写真に通底する姿勢を20年以上前の料理人が実践していたというのも面白く、彼の仕事の仕方を今になって手本にするとは思ってもいなかったけど、料理を勉強していて良かったと今になって思う。

 

先日は有休をもらい都内に出た。恵比寿の本屋をハシゴして、六本木と新宿四谷の写真ギャラリーを回って久々に写真をたくさん見る事ができた。21_21は定休日で残念。